鳥類学大会2024

終了しました

ご参加・ご発表ありがとうございました!

12月21日  

コアタイム1    13:45-16:15

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1. 移動時間で調べた栃木県のサシバ分布とその行動

〇鈴木由清(鹿沼自然観察会)・境野圭吾(栃木県レッドデータブック)

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サシバButastur indicusは環境省レッドリスト2020で絶滅危惧II類(VU)に掲載されており、北海道を除く46都府県のレッドリストでも絶滅危惧種に指定されている。栃木県では県全域で分布が確認されているものの、市貝町を除き多くの自治体で分布情報は散在的である。そこで現状における栃木県のサシバ分布を把握するため、2020~2024年に通勤や移動時間を活用し、目視観察および鳴き声記録を基に分布調査を実施した。その結果、計395地点で生息が確認され、県内25市町のうち19市町で分布が確認された。特に南東部と南西部で多くの記録が得られた。本発表では、本調査で確認された分布記録と繁殖期の生態的知見を紹介し、栃木県内のサシバの現在について考えていく。

3.希少鳥類の保全上の新たな課題~シカ等の増加による低層湿原の衰退の可能性~

〇多田英行(日本野鳥の会・岡山)

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岡山県内にある錦海塩田跡地には、チュウヒやオオセッカなどの希少な鳥類が生息している。これらの希少鳥類が生息するためには、ヨシ・スゲ群落などの良質な植生環境が必要となる。しかし、近年、国内ではシカやイノシシなどの大型哺乳類の分布拡大や個体数増加が見られており、丘陵地に隣接した当地でも大型哺乳類の目撃頻度が増加している。このような大型哺乳類の増加と同時期に、当地では湿地内のヨシ・スゲ群落の衰退(下層植生の消失、草丈の低下、生育密度の低下や裸地化)や、希少鳥類の生息状況の悪化が観察されていることから、本発表では湿地性希少鳥類の保全上の新たな課題を事例紹介する。

5. カラス類の死因解明と行動について~クラウドファンディングの中間報告も兼ねて~

〇中村眞樹子(NPO法人札幌カラス研究会)

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野鳥の大量死はしばしば発生するが、鳥インフルエンザが陰性だとそれ以降の死因解明はされていない。2020年から2024年の間に札幌市街地で発見されたカラス類の死骸について死因解明を行っていて、159例中36例が出血性壊死性腸炎と診断された。今回は死亡要因の多くを占めている、出血性壊死性腸炎(Clostridium perfringens)を中心に感染経路などをカラスの行動から推察する。2015年ころをさかいにポックスウイルス感染症(Avi Pox)による死亡及び数弱個体の発生はほとんど見られていない。また近年札幌市内で猛威を振るっている。カラスの生息数も減少している。高病原性鳥インフルエンザも含めて、カラス類の死因解明を明らかにしておくと今後の対応に役立つと思われる。

7. 日本国内における夜間フライトコール (NFC) の自動検出

〇加藤義清(バードリサーチ会員)・大坂英樹(トリルラボ)

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渡り鳥には夜間にフライトコール (NFC) という鳴き声を発しながら飛ぶ種がいることが知られている。我々は、市民科学プロジェクトとして、渡りの状況を明らかにするために、春と秋の渡りのシーズンに日本各地の協力者との連携のもと、録音調査を実施している。録音調査では膨大な録音データの分析に要する時間や労力が問題となる。本発表では、2024年春の調査データにNFCの自動検出手法を適用し、その性能を検証した。その結果、総録音時間の1%以下の音声を確認するだけで90%以上のNFCを正しく検出できることが確認できた。また、今回の分析結果から、録音調査によりNFCの季節変動が捉えられる可能性が示唆された。

9. ブッポウソウの亜種Eurystomus orientalis pacificusの国内初記録と過去の記録について

〇熊谷 隼(北大・院・理(現 EnVision環境保全事務所)

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沖縄県南大東島で2020年6月に観察されたブッポウソウの亜種Eurystomus orientalis pacificusについて報告する。また、1938年にパラオで採取され、ミナミブッポウソウの和名で報告されている本亜種の標本についても考察する。日本鳥類目録改訂第8版(2024)において亜種E. o.pacificusは掲載されておらず、本記録は日本国内における本亜種の初記録であると思われる。本亜種は主にオーストラリアやニューギニア等の南半球-赤道地域に分布するが、本記録と同様に、赤道から離れた北半球に位置するマリアナ諸島においても観察記録があり、今後も偶発的な渡来が記録される可能性がある。

11. GPSと音声からカラスバトの行動を探る

〇佐渡志穂里・幸松浩然・大津洸太朗・丸山雅人・山崎樹玲・渡辺葉月・徳原ゆり(国分寺高校・生物部)

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天然記念物のカラスバトは希少なだけでなく、人の姿を見ると隠れてしまう傾向が強いため、調査が困難な鳥である。この鳥の生態が知りたく、長らく本校生物部は島に通って調査を行ってきた。近年はGPS発信機や音声とその時の行動をリンクさせながらかれらの生態を知ろうと努力してきた。まだまだ未解明なことが多いが、彼らの生態の垣間見えたところを紹介する。

13. アオシギの生息している川底を探ってみました! (茨城県におけるアオシギの生息環境と生態)

〇岸久司

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茨城県内の沢を歩き始めて約20年が経過しました。今までの観察から解ってきたこと、いまだ解らないことをまとめて見ました。特に沢の自然環境や捕食していると思われる沢底の水生昆虫などについて注力してみました。ガガンボやトビゲラ、カゲロウ類の幼虫を捕食していることが解ってきました。本大会を機に本種に関心をもたれて、将来にわたっての環境保全や種の保護の一助になればうれしく思います。ページの最後に「隠れているアオシギを探せ!」のコーナーがありますので是非チャレンジしてみていただければと思います。
水鳥通信2019年12月号「アオシギは里山の身近な冬鳥です」
ではお世話になりました。
今回はそれ以降の観察を含めて再編集してみました。http://www.birdresearch.sakura.ne.jp/1_publication/Waterbirds_newsletter/waterbird_news21_201912.pdf

15. ネコのもつ病原体が希少鳥類に感染 -奄美大島における野生鳥類のトキソプラズマ感染状況-

〇鈴木遼太郎(日本獣医生命科学大学・院・病態病理)・吉村久志(同大・獣医保健看護・病態病理)・常盤俊大(同大・獣医・獣医寄生虫)・伊藤圭子(奄美いんまや動物病院)・鳥本亮太(ゆいの島どうぶつ病院)・新屋惣(奄美野生動物医学センター)・山本昌美(同大・獣医保健看護・病態病理)

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奄美大島で野生化したネコは、強い捕食圧に加え、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii、以下Tg)をはじめとした病原体の媒介により、固有種に影響を与えている。固有種の哺乳類では、Tgの感染による影響が明らかにされつつある一方、鳥類への影響は未解明である。本研究では奄美大島の野鳥を対象に、分子生物学的・病理組織学的手法でTgの検出を試みた。死亡個体の脳組織からPCR法によりTgの遺伝子の検出を行い、合わせて全身臓器の病理組織学的検査により感染の影響を調べた。検査の結果、アマミヤマシギ2個体でTgの感染が確認された。感染個体では心臓にTgが観察された一方、感染に伴う病的変化は見られず、健康に悪影響を及ぼしている証拠は得られなかった。

17. ジョウビタキの高山進出の実態

〇 飯島大智(筑波大学)  

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ジョウビタキは日本で冬鳥とみなされていたが、2010年以降に本州中部での繁殖が報告されている。これまで繁殖期の記録は、山麓や市街地に限定されていた。しかし、2016年には乗鞍岳の高山帯でジョウビタキが記録された。近縁種のクロジョウビタキは高山帯で繁殖することから、ジョウビタキが繁殖期に日本の高山帯を利用する可能性がある。本研究では、野外調査およびインターネットによる情報収集を実施し、高山帯におけるジョウビタキの繁殖期の分布状況を調べた。その結果、中部山岳域の3座の山岳の高山帯で繁殖期に記録が得られた。この成果は、ジョウビタキが日本の高山帯を繁殖期の生息地として利用していることを示している。

19. 鳥たちの気象防災講座(磁気嵐編)

〇太田佳似(日本気象予報士会)

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これまで日本の迷鳥の多くは気象現象が影響していることを示して来ました。しかし、残る15%ほどは北米から渡来する迷鳥たちです。西から東に天気が進む偏西風域では、説明が難しい北米からの迷鳥でしたが、来年の太陽活動ピークを前に、迷鳥と磁気嵐との関係が見えて来ました。これまでの一般的な迷鳥の理論(逆方向への渡りや鏡像ルートの渡り)にも、新たな解釈が与えられそうです。風と磁気嵐が織りなす自然の脅威の一端に触れ、昨年の台風ハザードマップに続き、磁気嵐ハザードマップもご紹介します。最後に、渡りをする蝶類や人間への影響も含め、これからの磁気嵐に備えるべきお話もできればと思います。

21. エコロジカルトラップからスズメを守る~巣立ち率の悪い営巣環境とその条件に関する調査~

〇岡村悠太郎(名城大院・農)・橋本啓史(名城大・農)

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近年、スズメはレッドリストで絶滅危惧に相当するほど、個体数の減少が顕著である。減少の理由の一つにスズメの営巣環境の変化が考えられ、住宅構造の気密化により、民家への営巣ができず,人工物へ営巣する個体も確認されている。
本研究ではスズメの営巣地付近の環境について緑被データを用いて明らかにし、2024年の春季・夏季・秋季に実施したルートセンサス法による踏査の結果と共に解析した。また、スズメの人工物への巣を模擬した「模擬巣」を使った巣の内部温度の調査も行った。最終的な目標はエコロジカルトラップとなる条件を明らかにすることであるが、本発表ではスズメの営巣地の選好性や滞在地の選好性について検討し。

23. 長崎半島沿岸の島嶼部で繁殖するウチヤマセンニュウの分布状況

〇大槻恒介(長崎大・院・水環)・木村智美(長崎県野鳥の会)・峰隆一

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ウチヤマセンニュウ(Locustella pleskei)は夏季に日本へ飛来し、島の低木林や草地を好んで繁殖する夏鳥である。本種は絶滅危惧種であるが、繁殖する島々についての詳細は十分に明らかにされていない。そこで、長崎県南部の島嶼において繁殖分布を調査した。調査はプレイバック法を用い、38地点で実施した結果、7つの島で繁殖期の生息を確認し、そのうち1か所では繁殖が確実視された。生息地は主に無人島で、植生は低木林や草地が主体であった。今後は未調査地域での追加調査を進め、繁殖地の特徴を解明するとともに、分布の全体像を明らかにしていきたい。

25. 亜種キュウシュウフクロウの尾脂腺の大きさについて

〇安田晶子(熊本県博物館ネットワークセンター)

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尾脂腺は尾羽背側のつけ根に位置する分泌腺で、鳥類は嘴を用いて尾脂腺分泌物を羽毛に塗って羽繕いをする。この分泌物には、羽毛の物理的・化学的な保護,病気や外部寄生の予防効果が報告されており、尾脂腺の大きさは鳥種や性別、季節で異なると指摘されている。しかし、日本においてはその測定記録はほとんどない。
そこで,仮剥製作製時に亜種キュウシュウフクロウの尾脂腺の測定した。その結果、体重が重い個体ほど尾脂腺も重い傾向がみられた。つまり、本種においては、体重から尾脂腺の重さが予測できる可能性が示唆された。また、性別ではオスが若干メスに比べて重い傾向がみられた。

27. PITタグを背側皮下に挿入したジャワアナツバメ巣内雛の巣立ちまでの成長観察:インドネシア中部カリマンタン州に位置するツバメビルコロニーを事例として

〇太田貴大(大阪大学人間科学部)・Ahmad Muammar Kadafi(パランカラヤ大学理学部)・ Adventus Robertino Rangin、Ardi Sandriya(パランカラヤ大学農学部)・ Nabil Fariz Noorrahman(パランカラヤ大学農学部)・橋本啓史(名城大学農学部)

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PITタグを用いた鳥類の個体識別は、生態や行動を知るために有効な手法の一つである。鳥体内にタグを挿入する方法は、脱落や劣化の可能性が低く有望である一方、負の影響を与える可能性もある。本研究では、巣内雛の背側にPITタグを挿入し、巣立ちまでの成長を観察した。対象種はジャワアナツバメとし、ツバメの巣採取専用ビル内で10巣13個体にPITタグを挿入した。その結果、技術が未熟な段階でPITタグを挿入した4個体が死亡した。巣立ちまで生存した10個体はタグの読み取りは可能で、タグの位置も移動しなかった。タグ挿入箇所の傷口は約1週間後には閉じていた。生存した10個体はすべて巣立ったと考えられる。

29. カルガモの換羽

〇長久保定雄(バードリサーチ会員)

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カルガモは雌雄同色同模様であり、他のカモのオスが持つような派手な生殖羽毛やエクリプスを示さず、年間を通じて一貫した外見を保つ。発表者は埼玉県朝霞市を流れる黒目川において、独自の個体識別法を用いてカルガモの行動と生態を観察してきた。その中で、成鳥カルガモの換羽(換毛を含む)を連続的に観察し、換羽に関する基本的な情報を整理することができた。しかし、換羽形態は非常に複雑であり、さらなる詳細な考察には至っていない。
本発表において、これまでの研究成果を皆様にご覧いただき、今後の整理方針についてご助言をいただければ幸いである。

31. イクメンマガモ(親子に付き添うマガモのオス)

〇新田啓子(日本オシドリの会)・中村眞樹子(NPO法人札幌カラス研究会)

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オシドリやマガモは一般にメスのみで抱卵育雛し、育雛期間中のメスはオスが近づくと物凄い勢いで追い払いますが、2024年札幌市中島公園において、マガモ親子に付き添っていたマガモのオスがいました。
マガモやカルガモのオスが親子に付き添っていた事例は数例報告されていますが、育雛期間通して観察した報告はないので、報告します。

33. ドキュメント60日 ヨタカの砂浴び場の前で

〇吉村正則

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ヨタカの生態について不明なことが多いのは、夜行性であるために調査者の負担が多く、調査が進んでいないことが一因と考えられる。最近ではトレイルカメラの普及で、警戒心が強かったり、夜行性の動物等、目視では調査が不可能な生物の調査に用いられている。
しかし、ヨタカの砂浴びに関する単発的な報告はあるが、継続的な研究事項は国内外とも見当たらない。こうした事から香川県まんのう町で、トレイルカメラを設置してヨタカが砂浴びに来る時間、気象との関係等を調べた。このような記録の蓄積は、ヨタカの生態を把握するための重要な基礎資料となるため報告する。

35. 夜間フライトコール(NFC)録音に適した マイク指向性の検証と試作

〇大坂英樹(トリルラボ)・櫻井佳明(加賀市鴨池観察館)・ 田米希久代(加賀市鴨池観察館)

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渡り鳥の夜間フライトコール (NFC: Nocturnal Flight Call) の録音調査を2024年春から開始し日本各地でデータ収集を進めている。本研究では、録音位置やマイク指向性の違いによるNFC検出数の差異を分析し,最適なマイク指向性を検証した。レーダーを用いた先行研究により、高度300mまでは高度に比例して飛翔数が増加することが確認されていることから、指向性の高いパラボラ型マイクが有利であることがわかった。さらに、実運用を見据えて耐候性と長期設置が可能なパラボラ内蔵箱型マイク(通称「パラ箱」)を試作し、SNR > 25 dBの優れた指向性を持つことを実証した。

37. デジタル一眼レフカメラを鳥類の距離推定に利用する

〇中津弘

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範囲を限定したセンサスや地図記録など、野外では観察者と鳥類の間の距離を知りたい場合が少なくない。市販のレンズ交換式デジタル一眼レフと望遠レンズを利用して、撮影した鳥類の距離推定を試みたので報告する。5種の猛禽類の全長にそれぞれ対応したバーを貼り付けたプレートを異なる距離(50-650mの50m刻み)で撮影しておき(画質はJPEGの最大画素数)、画像をQGISで開き、PC環境上での”長さ”から実際の撮影距離を推定する回帰モデル(累乗モデル)を得た。撮影条件(撮影画素数、レンズ焦点距離、センサーサイズ)によって距離推定モデルは異なり、条件ごとに推定モデルを作る必要があるが、機構を理解すれば有効に利用できると思われる。

39. ハヤブサの速度記録のシミュレーション

〇大田黒俊夫

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鳥の速度に関するギネス記録はハヤブサ(Falco peregrinus)を高度5182mから急降下させて得られた389km/h、その映像はYouTubeでも見ることができる。しかし本当にこのような速度が可能なのだろうか?ハヤブサの急降下については多くの研究があるが、いずれも空気密度を一定と仮定した終端速度近似であり、大高度差の降下に対しては実大気との乖離が大きすぎる。本研究では高度差が2000mを超えるような急降下を現実的な飛行環境のもとで再現した数値実験を行い、この記録が力学的に妥当なものか検証する。時間が許せば鳥の高度記録についても紹介したい。

 12月22日

コアタイム2    14:10-16:30

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2. 水沢の森に生息するガビチョウの生態調査

〇北島凜花(東京都市大学・環境創生)・西田澄子(東京都市大学・院・環境情報)・ 北村亘(東京都市大学・環境創生)

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特定外来生物ガビチョウの生態および在来鳥類との関係について、川崎市宮前区の水沢の森において調査を行った。ラインセンサス法を用い、調査地に生息する鳥の出現地点を調べた。また、ガビチョウとウグイスの林縁からの距離を分析した結果、ガビチョウの平均距離は7.41m、ウグイスは11.27mで有意差が見られた(p値=0.032)。この結果から、ガビチョウとウグイスが異なるニッチを利用している可能性があり、生息環境の分化や競争回避のメカニズムについてのさらなる研究が必要である。

4. 市街地のツミの繁殖行動 Part2

〇緒方晴

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野鳥観察を始めたばかりの頃にツミを見て、「近所の公園にもこんな猛禽類がいるのか」と興味を持ち、市街地で繁殖するツミの番の子育てを、2021~2024年に観察してきた。昨年は、営巣場所を変える際に、前回の場所から500mほどの距離にあるアカマツを選んでいたことを報告した。今年の子育てでも、同じような行動をとるのか調査した。昨年の営巣場所で1回目は巣作りに失敗し、営巣場所を移動した。2回目の営巣場所は、やはり500m圏内のアカマツで、2羽の雛がかえったが、途中巣が落ちるという大変な出来事が起きた。その後、雛が1羽枝に掴まって生き延び、無事巣立つことができた。

6. 川に架かる電線上にできたコサギの集団塒

〇橋本啓史(名城大・農)

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2024年9月4日に愛知県名古屋市天白区の天白川に架かる電線上にコサギの集団塒を発見し、時々観察した。大通りの橋近くであるが、照明はコサギを照らしてはいなかった。16羽~26羽前後のコサギのみが塒として使用し、11月3日までは電線上で観察できたが、11月8日には観察できず、翌日にやや下流の河川堤防上の樹林に塒が形成されていることがわかった。季節的に寒くなったので移動したのかもしれない。その後の観察で、河川堤防上の樹林に塒に集まるコサギの個体数は60羽前後まで増えた。また、就時前集合のような行動も観察された。

8. 将来起こりうる野鳥とドローンの関係性について

〇渡辺侑里香(東海大学)・田中真(東海大学)

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スペースデブリの研究のため、ドローンを成層圏より高く飛ばす想案から、地上と成層圏を頻繁に往復するためドローンと野鳥が衝突するのではないかと考え、ローンと野鳥の関係性について研究をする。研究方法は動画サイトの記録やWebサイト上の文献、本や雑誌の情報を研究データとして用いた。この研究から、バードストライク等の4パターンに考慮した結果野鳥にとって大きなダメージとなる。また、バードアタックが起こりやすい時期とは、繁殖期の時期が多くなると予想する。なので、ドローンと野鳥の関係性とは、野鳥に対する保全活動や規制を行うことや、ドローンを操縦する場合は各種申請や資格の有無、野鳥についての知識が必要と考えた。

10.ヒナを拾わないで!拾われたヒナのその後~傷病鳥獣救護施設における実績からの報告~

〇佐藤悠子(新潟県愛鳥センター紫雲寺さえずりの里)

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ヒナを拾ってはいけないことが浸透しつつあるものの、救護施設に預ければ大丈夫と思われていることも多い。新潟県ではヒナを保護収容の対象外としており、問い合わせを受けた際にはヒナを親元に返すためのアドバイスを行っているが、毎年引き取らざるを得ないケースがある。そういったヒナがどのような結末を迎えたのかについて公表されている資料はこれまでにほとんどない。 
愛鳥センターにおける2008年~2022年の収容データから、ヒナに関連する収容事例について分析した。巣立ち前の日齢では7割程、巣立ち後の日齢でも5割程が死亡していた。放鳥できたケースでも、放鳥後間もなく捕食された事例や、餌が採れずに死亡した事例があった。

12.イクメンなジョウビタキは3回も繁殖

〇山路公紀・浦田そら

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繁殖にかかるエネルギーは大きいため、多くの鳥は年に1回しか繁殖しない。ジョウビタキは、元々の繁殖地である中国やロシアで、年に1-2回繁殖するとされている。八ヶ岳周辺で15年間の繁殖を調べた結果、限られた繁殖期のなかで3回繁殖したペアの数は全体の8%であった。巣立ち日の分布を調べた結果、3回の巣立ち日の中央値の差が42日および34日であった。営巣開始から巣立ちまでにおよそ38日を要することから、造巣、産卵、抱卵期間の一部が、前回の巣内外の育雛期間と重なっていた。また、営巣場所の多くは同じ建物の異なる場所か近隣にあった。これらは、特にオスの働きによる繁殖期間短縮のための工夫と考えられる。

14.データロガーによる追跡で明らかになったアオシギの日周行動について

〇細谷淳(鳥類標識協会)・田谷昌仁(鳥類標識協会・東北大学)・竹田山原楽(鳥類標識協会・東北大学)

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アオシギは主に山間部の渓流に生息し、水田のような開けた環境への出現は稀とされていた。しかし、2021~2023年の発表者らの調査で越冬期の夜間、水田に頻繁に出現することが判明した。これを詳しく調べるため、5羽にGNSSロガーを装着、放鳥した。平均50.4日間追跡をし、5羽合計934地点の位置情報を取得した。追跡データから昼間は山間部の河川(渓流や川幅25mの河川)や林内の湿地で過ごし、夜間は水田などの農地に移動する習性が確認された。昼夜の生息地は982~3,298m離れており、特に夜間の利用場所には強い固執性が見られた。

16.100回の採食記録に必要な調査努力量の推定:林床低木・草本の事例

〇北村俊平(石川県立大学)

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結実数が少ない林床低木や草本の有効な種子散布者はほとんどが未解明である。石川県内の低木や草本12種を対象とした自動撮影カメラAcorn6210MCを利用した研究から、100回の採食記録に必要な調査努力量(カメラ日、全撮影回数、有効撮影回数)について紹介する。100回以上の採食記録が得られた6種で必要なカメラ日は309から1755日(100回換算で68から780日)、全撮影回数は1181から8928回(100回換算で605回から9655回)、有効撮影回数は200回であった。対象種によっては効率よく果実を利用する動物を解明することができた。しかし、撮影データ解析の効率化が大きな課題である。

18.神奈川県及び山梨県で標識をしたコブハクチョウCygnus olor の動向と今後の個体管理

〇加藤ゆき(神奈川県立生命の星・地球博物館)・葉山久世(かながわ野生動物サポートネットワーク)・篠田授樹(地域自然財産研究所 )・菊池 博(横浜市立金沢動物園)

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ユーラシア大陸に広く分布するコブハクチョウは、1900年代半ば以降、国内の飼育施設や湖沼等に愛玩用に導入された。近年は逸出個体が各地で観察され、繁殖も確認されている。国内の湖沼等で見られる大半は、飼育個体に由来する外来種である。神奈川県では1978年に初めて記録され、2021年に丹沢湖で営巣が確認された。山梨県ではこれまで山中湖と精進湖で繁殖が報告されていたが、2020年に河口湖での繁殖が確認された。翌年も繁殖し、同所での羽数増加の可能性が高くなったことから、丹沢湖と合わせて標識をつけ個体追跡を開始した。来春からは、山中湖村と調整のうえ山中湖に生息する約50羽に識別用の足輪の装着し、個体管理を進める予定である。

20.コヨシキリの帰還と換羽

〇市原晨太郎(北大)・青木大輔(森林総研)・先崎理之(北大)

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鳥類の帰還率は個体や生息地の質との関連が見られ、生態や環境の特性を理解する上で重要な指標であるが、これを知るには標識と再確認という労力のかかる調査が必要である。一方で、換羽の進行も同様に生息地の質と密接に関係する。換羽と帰還率の関係が分かれば、より簡易に得られる換羽データから帰還率や繁殖地の質を評価できる可能性があるが、直接調べた例はない。本報告では、北海道で繁殖するコヨシキリの繁殖地における帰還率と換羽状況について、試行段階の調査結果を紹介する。標識数が少なかったために帰還と換羽および生息地の質との関係は評価できなかったが、一部の標識個体の帰還と、繁殖地での換羽状況を把握できた。

22.市民科学調査の参加動機と野鳥への共感の関係

〇大井琳太郎

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野鳥研究において、市民科学は野鳥の生態、生息状況を明らかにする上でおおいに貢献している。市民科学者の参加動機の心理尺度を用いた調査は世界では数々なされているのに対し、日本においてはない。また、動物との好意的な関わりを促進する「共感」と参加動機との関係は明らかにされていない。市民科学の参加動機を明らかにするCitizen Science Motivation Scaleと日本語版対人反応性尺度IRI-Jを用いて、大阪府における野鳥観察会及び冠島におけるバンディング調査参加者の参加動機と共感性、それらの関係を明らかにした。共感が1つのカテゴリーに縛られない広範な動機であることが明らかになった。

24.カワセミの嘴Ⅱ

〇内田博

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鳥類の嘴は口と手を併せ持つ機能がある。さらに嘴は二次性徴、性差などを表現していることもある。カワセミを、埼玉県で捕獲を行い、嘴についての形態の変化を調べた。カワセミの嘴は年齢、季節によって長さ、色彩が変化した。巣立ち後の幼鳥の嘴は黒く短いが、11月頃までに成鳥と同じ長さに伸長する。また性差を表す色彩は、雌の個体では巣立ち後2ヶ月程度で発現する。この時期には下嘴の赤色は暗いオレンジで、雄個体でも同様な発現をするが、雌では時期が進むにつれ赤色部分が増加する。成鳥でも嘴の長さは一年を通して変化があり、色彩も変化する。

26.東京都における鳥類繁殖ランクの空間分布とその要因

〇森田瑞(滋賀大学データサイエンス学部)・田中勝也(滋賀大学経済学部/環境総合研究センター 教授)

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本研究は東京都における鳥類4種(スズメ、ヤマガラ、オナガ、ハシブトガラス)の繁殖分布とその要因を分析した。1kmメッシュデータを用いたLocal G*分析と回帰分析を実施し、都市化に適応する鳥類でも土地利用の多様性が重要であることが示された。また、ヤマガラは都心部においても繁殖可能なホットスポットが確認され、都市域における緑地の保全が森林性鳥類にとって重要であることが示唆された。都心部でも足立区、江戸川区、大田区など、水域を有していても土地利用が単調で、林地の乏しい地域ではどの鳥類においてもホットスポットが確認されなかった。

28.ベランダコミュニケーション2024

〇小杉美樹

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ベランダに来るヒヨドリとオナガの観察記録です。気づいたことなどをまとめています。今年はオナガとヒヨドリの関係性、ヒヨドリの空間認識について、オナガの繁殖地検討方法について記載しました。拙い内容ですがよろしければお立ち寄りください。

30.森林保護思想の変遷-森林は雨をもたらすか?-

〇 黒沢令子(バードリサーチ) 

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森林は、鳥類を始めとして多様な生き物を育む存在である。しかし、一たび文明社会が林産資源や土地開発の対象として目を付けると、森林は世界中で見る影もなく減少した。森林には多様な機能が認められており、水資源や土壌、さらには炭素の蓄積を通じて気候の安定化をもたらすともいわれる。さらに、森林があれば雨が降るという仮説も提唱されたが、その真偽を巡って主に北米で科学界・政界を巻き込む大論争が起きたことがある。
こうした森林の機能について、人はいつ頃気づいたのか?そして、現存する森林はどのような思想の結果で残ったのだろうか?ここでは森林保護に寄与した西洋の思想史を探ってみる。

32. 陸鳥性が強い飛べない鳥の雨覆羽や風切羽には縞状の模様があらわれやすい

〇鈴木理央 

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本発表では、飛べない鳥における翼(風切羽や雨覆羽)の縞模様の有無とその生態的背景について陸鳥性と水鳥性の違いに着目し、e-Birdをはじめとしたデータを活用して調べた結果を発表します。陸鳥性が強い飛べない鳥では雨覆羽や風切羽に縞模様が現れやすい一方で、水鳥性が強い飛べない鳥では縞模様がほとんど見られない傾向があることが調べていて明らかになりました。縞模様の形成要因について、どのような役割を持っているのか生態的役割や進化的背景の視点から考察をしてみます。

34. 1990年代から2010年代にかけての東京都心部でのスズメの増加と郊外での減少

〇植田睦之(バードリサーチ)・三上修(北海道教育大学教函館校)

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東京都鳥類繁殖分布調査により1990年代から2010年代にかけてスズメが都心部で増加し、郊外で減少したことが明らかになった。スズメの採食地の緑地も同様の変化をしていたことより、土地利用の変化がその増減に影響していると考えられたが、2010年代の都心部の緑地面積は依然として郊外よりも狭く、緑地面積だけでは変化を説明できなかった。捕食者である猛禽類は都心部で少なく、これが影響している可能性も考えられた。繁殖成功率は都心部の方が低く、捕食者の少なさなどから都心部にスズメが集まったものの繁殖成功度が低い可能性もあり、より詳細な個体群動態の研究が必要である。

36.樹木が枯れるとキツツキ類と樹洞に営巣する鳥が増えるモニ1000コアサイトの森

〇高木憲太郎(バードリサーチ)・小川裕也(自然環境研究センター)

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環境省の事業で実施されているモニタリングサイト1000陸生鳥類調査のコアサイトでは、毎年継続して樹木や徘徊性昆虫の調査が実施されている。同じ場所で複数の分類群について詳細な調査がされている強みを生かすことができないかと考え、毎木調査から得られる樹木枯死率(前年調査で生きていた木のうち、枯れた木の割合)の集計値を用い、鳥のデータとの比較を行った。鳥の個体数データを営巣形態ごとに集計し、樹木枯死率との関係を分析したところ、樹木枯死率が高い森ほど、鳥全個体数に占めるキツツキ類の割合が高く、樹洞に営巣する鳥の割合も高いことがわかった。

38.参加型調査による 鳥の採餌観察記録の データベース化

〇植村慎吾(バードリサーチ)

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鳥がどこで何を食べるかについては、神奈川県鳥類目録などで情報が蓄積されているものの、全国的にはまだまだ情報が不足しています。そこで、参加型調査として採餌情報を全国から1例ずつ収集し、食性データベースを作成しています。2022年に収集を開始し、これまでに約5300件、291種の記録を寄せていただいています。これまでの記録から明らかになってきた鳥の食性の季節変化や場所などによる違い、環境利用、これまで食性の研究が少なかった鳥種で多くの記録が集まっている例、世界中で多くの先行研究があるカワウで新しい食性が明らかになった例、論文で引用された例などを報告します。

40. 河川流域を利用する草原性鳥類の最大個体数経年変化

〇姜雅珺(バードリサーチ)・神山和夫(バードリサーチ) ・粕谷和夫(八王子カワセミ会)

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東京都繁殖分布調査から、草原性鳥類が減少したことが全国で知られている。しかし、局所的な個体数情報の獲得が難しいため、その変化について調べられていない。八王子カワセミ会では、1985年から現在までのデータを蓄積しており、草原性鳥類の局所的な変化を解析できるようになった。そこで、本研究では、八王子カワセミ会のデータを用いて、八王子市と日野市において、繁殖期に浅川・多摩川流域を利用する草原性鳥類の個体数変化傾向を解析した。その結果、草原性鳥類の最大個体数が経年的に減少していることが示された。また、各種の記録率の結果から、最大個体数の減少傾向が2パターンに分けられた。

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