鳥類学大会2022

JBRA Ornithological Conference 2022

ポスター発表プログラム

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※大会が終了したので会場を閉じました

下にスクロールすると発表タイトルと要旨があります。各発表のタイトルをクリックするとPDFを閲覧できます

ポスター番号が奇数の発表は7日 9:50–11:50がコアタイム
ポスター番号が偶数の発表は8日 9:30–11:30がコアタイム です

投票による賞の決定について

最優秀ポスター賞   投票はこちら!

対象 :全てのポスター発表
審査員  :全参加者
審査基準:参加者がそれぞれの基準で最も面白いと思った発表に対して1票を投じ、最も多くの票を集めた発表に対して授与します。

ヒマラボ賞      投票はこちら!

ポスター番号の右隣に*のマークがついているものがヒマラボ賞の対象です

対象  :空いた時間に行った調査研究活動によるポスター発表(発表者による申告)
審査員 :全参加者

趣旨と審査基準:鳥類学は、ちょっとした好奇心や行動力でチャレンジできる学問です。発表者が仕事や学業、家事をしながら空いた時間に取り組んだ調査や研究、研究者がメインテーマとは別にちょっとやってみた研究にもスポットライトを当てたいと考えます。参加者が、自分でも空き時間にやってみよう!と意欲をかき立てられた発表に1票を投じます。最も多くの票を集めた発表に対して授与します。
※協賛団体の一般社団法人ヒマラボは、「好奇心を楽しもう、空いた時間に研究的な活動をして小さな知的生産をめでよう」という思いを込め、ヒマなときに研究するラボです。


樹洞性繁殖鳥類が非繁殖期にねぐらとしての巣箱を使用する報告は、シジュウカラ、アカゲラ、ヤマゲラなどで知られている。しかし、ムクドリでは、これまで非繁殖期にねぐらとしての巣箱の使用は知られていなかった。ムクドリが千葉県船橋市で2020年12月から2021年1月までの厳冬期に巣箱で29日間ねぐらをとった。巣箱でねぐらをとった理由は巣場所競争のためである可能性が高いことを報告したい。

ポスター発表 P-02*

「落とし物」から推測するハヤブサの食性

〇加藤ゆき(神奈川県立生命の星・地球博物館)

発表者は地面に落ちている羽やペリット(落とし物)に着目し、それらを手掛かりに地域にどのような鳥類が生息しているのかを調べています。その場にいなければできない「観察」とは違い、「落とし物」はいつでも拾うことができ特別な機材が必要ないこと、整理も簡単なことから気軽にできる調査手法の一つだといえます。今回の発表では、ハヤブサの食事場所の下で拾った「落とし物」から本種の食性を推測します。

ポスター発表 P-03*

サーマルイメージングカメラを用いた小鳥類の営巣基質の表面温度測定:見えてきた課題と可能性

〇三上かつら(バードリサーチ)・森本元(山階鳥研)・上野裕介(石川県立大)・三上修(北海道教育大)

“サーマルイメージングカメラ”は、温度を画像化することができるカメラである。近年、これを用いて夜間の鳥の検出や、鳥の代謝の計測、林内にいる猛禽類の位置検出などに応用されている。本研究では、サーマルイメージングカメラを用いて、人工環境で直接観察することが困難な場所にある小鳥類の営巣場所検出を試みた。固定式視線誘導柱の内部にある巣の位置について、現時点では検出が難しいということがわかった。一方で、このカメラを利用できそうな状況や必要な設定に関し、いくつかの知見が得られたのでここに報告する。

ポスター発表 P-04

鳥と人の関わり:1万2千年の西洋史

〇黒沢令子(バードリサーチ)

人は有史以前から鳥と関わりを持ってきた。西洋史を通じてその関係を総括した“Birds and Us”(2022)が出版されたので、主な内容を紹介したい。鳥は早くも新石器時代の岩絵に登場し、絵文書等を含めて長く記録に残されてきた。人にとって鳥は食料や衣服などへの直接利用の対象から始まり、やがて鷹狩のようにその力を借りたり、科学の発展と共に、鳥の生き様を観察して科学技術や知的活動のインスピレーションの対象にもなる。保護活動や野外研究が盛んになった背景は、乱獲で鳥が減少したことへの気づきだった。

ポスター発表 P-05

街角で見かけるドバトの趾(あしゆび)切断

〇西田澄子(東京都市大・院)・海瀬慧(東京都市大・環境)・北村亘(東京都市大・環境)

街中のドバトを観察していると、趾(あしゆび)を失ったドバトを見かけることがあります。私たちは、ドバトが趾を切断してしまう現象に関与する要因を探求すべく、まず趾欠損のあるドバトや他の鳥がどのぐらい見られるか、調査をはじめました。その結果、多くの趾欠損個体が身近で見られることが分かりました。今後、さらに観察を続けて、将来的には趾欠損の発生率と周辺の環境を比較していく予定です。

ポスター発表 P-06*

瀬戸内海中部におけるカモメ類の季節変化(予報)

〇多田英行(日本野鳥の会・岡山)

瀬戸内海中部のカモメ類の個体数の季節変化を調べるため、2020-2022年の越冬期(9-3月)の岡山県内のカモメ類の個体数をカウントした。その結果、ウミネコは越冬期前期に個体数が最大(800-1200羽)となり、カモメは越冬期後期に最大(60-170羽)となった。それ以外のカモメ類は越冬期中期から後期にかけて最大となった(セグロカモメ:240-260羽、オオセグロカモメ:1-6羽、ユリカモメ:790-1150羽、ズグロカモメ:16-17羽)。2022年の越冬期中期の第1回冬羽個体の割合は、ズグロカモメでは約18%、それ以外のカモメ類では約1%だった。

ポスター発表 P-07*

観察からわかった仙台の鳥の20年

〇宮本竜也(東北大学理学部)

杜の都と呼ばれる仙台は緑と都市が近接して発達した街で、自然林と都市に挟まれた公園では20年以上にわたり鳥の観察会が行われてきた。この間に住宅地の立ち退きと公園整備が近隣で進み、鳥の住む環境は変遷してきた。公園整備に伴う長期的な鳥の変化として、冬に見られる種数は森林性の鳥を中心に増えていた。今回は増減のあった種の具体例を紹介する。一方で春の渡りは気候変化を受けて早まっていると言われており、広域の気候の指標と関係していた。加えて越冬する地域を考慮すると渡りの時期をよく説明しうるとわかった。

ポスター発表 P-08

奥秩父突出峠の森林環境と鳥類群集(1989年〜の変化)

〇石田健(自由科学者)

埼玉県秩父山地の標高1650m付近の針広混交林で、1989年から森林景観と鳥類群集を観測した。丈約2mの密集したスズタケが登山道両側の林床を覆っていたが、現在2022年はシカの被食によりスズタケの姿が消えた。シカ剥皮によるウラジロモミと老衰によるウダイカンバ等の枯死、倒木によってギャップの多い植生に変化した。ウグイス、コルリ、クロジ等がいなくなり、林冠を利用する種の生息密度も低下した。気温上昇にともない、エゾハルゼミが鳴きだし、アカハラやキビタキが生息するようになった。写真と録音で紹介する。

ポスター発表 P-09*

籠川でのイソヒヨドリの出現傾向

〇渥美美保

籠川沿いの365日の野鳥観察は3年目の終盤に入りました。年に数回しか遭遇しない種も含めた89種の出現傾向を見える化した記録の中で、イソヒヨドリが特徴的で興味を持ちました。繁殖期にオスのさえずりが聞かれた1年目、オスが出現しなかった2年目、3年目とも、8月中旬から10月にかけて、メス1羽がさえずったり虫を捕食したりして滞在しているようです。秋だけの顕著な出現は、内陸に進出中のイソヒヨドリに共通する傾向なのでしょうか。

ポスター発表 P-10

宍道湖におけるトモエガモの個体数について

〇森茂晃(ホシザキグリーン財団)・星野由美子(三瓶自然館)・安食一歩(島根大学)・豊田暁

宍道湖では2019-20年の越冬シーズンに2万羽を超えるトモエガモが確認された。2019年までは既存文献等に宍道湖で2万羽以上の記録は見当たらず、千羽以上の記録でも不連続に4シーズンしか見当たらなかった。しかし、2019−20年以降は3シーズン連続して数万羽が飛来している。この3シーズンは、群れを確認した後はほぼ見つからなくなるまで調査し、期間中の9割以上の日数からなる個体数の記録を得た。また、2021-22年シーズンは江の川の個体数も記録した。本発表ではそれらを比較しながら紹介する。

ポスター発表 P-11*

小河川における育雛前中後の成鳥カルガモの行動と生態

〇長久保定雄(バードリサーチ)

2022年、埼玉県朝霞市を流れる黒目川において撮影した約7000枚のカルガモ写真を解析し、可能な限り個体識別・雌雄判別して11組のペアを抽出し、5組が育雛に至り、抱卵の形跡はあるものの6組が育雛まで至らなかったことを確認した。また、育雛が認められたペアと、認められなかったペアの、定住性およびペア継続性の違いについて多くの情報を得ることができた。加えて、繁殖期を通して多くのカルガモの嘴の模様が大きく変化することが観察されたとともに、雌の嘴に婚姻色のようなものが現れることが示唆された。

ポスター発表 P-12*

ジョウビタキとシジュウカラの営巣競争:巣からの視界が鍵

〇山路公紀・石井華香

冬鳥であるジョウビタキが日本で繁殖域を拡大している。ジョウビタキとシジュウカラが営巣した換気扇フード、郵便受けおよび巣箱を、両種の利用状況に応じて4グループに分けて比較・分析した。ジョウビタキはシジュウカラに比較して、巣から外をみる視界が広い構造物を利用していた。この視界が狭くなるにつれてシジュウカラも利用するため、営巣場所をめぐる競争がおきていた。さらに視界が狭い構造物をシジュウカラのみが利用していた。穴径も重要な要素であるが、広い範囲において、巣からの視界の広さが重要な要素となっていた。

私は小笠原諸島や伊豆諸島の島々を経由して飛来するツバメ(Hirundo rustica)の生態を島民の方達と協力して調べています。これまでの調査で、現在の伊豆諸島では主に三宅島以北の島で繁殖をしていることがわかっています。2022年の繁殖期に、地元の協力者とともに可能な限り街の中で巣を探し、聞き取り調査をおこない、大島、新島、式根島、三宅島の4島のツバメの巣の数や、繁殖状況を調べました。ツバメの生態を明らかにするための基礎となる調査を目指しました。それぞれの島で観察されたツバメの巣の数や、繁殖の状況などを報告します。

コシアカツバメの秋の集合は散発的に報告されるが、認知度が低く、情報も乏しい。そこで、本種の集合が観察される大阪府交野市とその近辺で2022年に予備的な観察を行った。同市内の本種が秋に集合する地区で4-10月に行ったラインセンサスでは出現は9月に最多となり、同市近辺で9-10月に行ったポイントカウントでは、出現は集合地区で最も多く、同地区から遠ざかるにつれて減少した。同地区での早朝観察では、9月に25-149羽の集合止まりを確認したが(日中の止まり数は最大230羽)、10月には集合止まりは認められなかった。

ポスター発表 P-15

都市―農村間の環境勾配におけるツバメの営巣地選択と最適環境の評価

〇天野孝保(長大・院・水環)・山口典之(長大・院・水環)

都市と農村は人的活動により形成された二次的環境である。鳥類のいくつかは典型的な都市と農村、それを繋ぐ連続的に変化する環境勾配を広く利用する。本研究では、都市から農村にかけての環境を広く利用するツバメを対象とした。本種の繁殖において、都市や農村よりむしろ両者の中間に良好な環境が存在するのかを知ることを目的とした。都市から農村にかけての環境勾配を指数化するための「都市度」を算出し、それと営巣数の関係を解析したところ、中間的環境が営巣地として多く利用される可能性が示唆された。

ポスター発表 P-16*

ヤマガラ・クラッチサイズ・リビジテッド

〇関伸一(森林総研・関西)

鳥類の生活史研究における古典的な指標の一つがクラッチサイズ(一腹卵数)。「卵は何個かな?」パッと見てわかる、抱卵期間中に1回確認できれば記録になる、捕食に影響されにくく意外と記録数が稼げる、というわけで、巣箱への予定外の入居者のクラッチサイズは巣箱研究者のサブテーマにもってこいです。今回は沖縄島でホントウアカヒゲ用巣箱を占領してしまう困ったヤマガラの記録をもとに、最先端のテーマではないかもしれませんが、最南端のヤマガラの小さいクラッチサイズを報告。日本列島周辺での地域変異もレビューします。

ポスター発表 P-17

溶岩草原で繁殖するヨタカ!富士山麓での営巣環境となわばり分布

〇水村春香(東大・院)・渡邊通人(富士山生物多様性研)・久保田耕平(東大・院)・樋口広芳(慶應大)

「よだかは、じつにみにくい鳥です。」宮沢賢治の『よだかの星』の一節で知られるヨタカ。夜に活動し、巣はつくらず地面に直に卵を産むという独特の生態...。かれらは主に開けた森で繁殖しますが、富士山麓では草原でも恒常的に繁殖することを私たちは見つけました。そこで、どれくらいの密度で繁殖し、どんな環境に巣はあるのか、ということを調べました。すると、広大な草原の中でなわばり分布は意外にも偏っていること、営巣場所にも特徴があることが見えてきました。鍵となるのは、富士山の「溶岩流」!?

ポスター発表 P-18

ケリの季節移動と行動圏の解明

〇小丸奏(岐阜大学大学院自然科学技術研究科)

昨年度バードリサーチ支援研究プロジェクトにてご支援を頂いたため、研究途中ではありますが、経過を報告させていただきます。
ケリは先行研究の結果から、季節移動を行っている可能性がありましたが、そのルートや行動圏はわかっていません。そこで、繁殖地でケリにGPSを装着し、年間を通しての移動ルートや行動圏の解明を試みました。現在,調査地内の多くの個体は確認できなくなりましたがGPSを装着した個体は繁殖地にとどまっており、大きな移動はしていない状況です。

ポスター発表 P-19

クロサギの羽色と採餌行動及び利用環境の比較

〇植村慎吾(バードリサーチ)

クロサギには黒色型と白色型の二型があり、低緯度地域ほど白色型の割合が高い傾向がある。採餌の方法が羽色によって異なるという少数の先行研究があるが、先行研究間で一貫した傾向はない。本研究では、採餌行動を5分間記録し、羽色との関係を調べた。歩数、捕食の試行回数、ジャンプ回数などの捕食行動に羽色による有意な違いは見られなかった。白色型の個体の方が多様な環境で採餌をしている可能性があった。また、Web上の写真検索で採餌中の写真を集め、捕食した魚の大きさを比較したが、羽色による違いはみられなかった。

ポスター発表 P-20

津軽海峡周辺で繫殖するウトウの採餌場所選択と繁殖アウトプット

〇小澤光莉(東洋大院)・東條菜々花(東洋大院)・島袋羽衣(明治大)・平田和彦(千葉県立中央博物館)・伊藤元裕(東洋大)

変動性の高い海域は魚類の量や分布が変化しやすい。複数の海流により変動性が高い津軽海峡(松前小島、鯛島、弁天島)で繁殖するウトウの採餌域、餌、雛の成長を調査した。松前小島と鯛島では繫殖地周辺、弁天島では噴火湾湾口から恵山周辺の太平洋を高頻度に利用した。2019年弁天島ではマイワシの利用が推定されたが、2021、2022年では全島でカタクチイワシが利用され、雛の成長が高まった。本海域では、島毎にウトウの選好海域はあるが、カタクチイワシの選好性が高く、その利用可能性に応じた繁殖成績の変化が示唆された。

ポスター発表 P-21*

オオハクチョウ(Cygnus cygnus)において認められた嘴のパターンのバリエーション

〇岡田東彦(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類)

国内には主にオオハクチョウ(Cygnus cygnus)およびコハクチョウ(Cygnus columbianus)計2種類のハクチョウ類が越冬のため、飛来する。上嘴基部における黄色部の形状が両種を識別する際の特徴の1つに挙げられるが、その形状には個体差が認められるとされ、嘴のパターンは3ないしは4つの型に分類されるとの報告が知られる。発表者はオオハクチョウに着目し、2022年10月から12月にかけて、嘴のパターンの観察・撮影を試みた。本発表では、本種の嘴のパターンの個体差について報告する。

ポスター発表 P-22*

電柱や電線に止まる猛禽類と周辺環境

〇天野孝保(長大・院・水環)

電柱や電線は、都市部や農村部、沿岸部や内陸部など環境要素に関係なく全国各地に存在する人工物である。鳥類のいくつかは、繁殖期や渡り時期、非繁殖期など生活史において休息や採餌の際にこれらの人工物を利用することがある。本研究は、長崎県五島列島福江島において研究活動の空き時間に補助的に行ったもので島内を周回し、越冬期に電線を利用する猛禽類を対象として、その周辺の環境の理解を深めた。本研究は環境や車の有無、時間帯、季節などを限定することなく実施できるためちょっとしたチャレンジ精神で挑戦できるであろう。

農業用水路は水田とは異なる水辺環境として多様な生物のハビタットとなっているが、鳥類のハビタットとして評価した研究は少ない。平地水田地帯の水辺環境は、水稲の管理により時期的に大きく変化するため、鳥類の生息に与える影響は大きい。その中でも水路は非栽培期においてハビタットとして機能する可能性がある。本研究では水路の形態をコンクリートと素掘りに分類し、栽培期と非栽培期で鳥類の利用を調べた。その結果、非栽培期においてコンクリート水路が鳥類ハビタットとして利用性が高いことが示唆された。

ポスター発表 P-24

埼玉県小川町のメガソーラー計画地におけるミゾゴイの生息状況

〇1小林みどり・2鈴木邦彦・3鈴木治美・2高瀬仁志・1小林洋一・4斉藤裕也・5小山正人・5 小山和美・6 内田博  (所属:1 みぬまサウルス企画事務所 2 比企の太陽光発電を考える会 3 小川町里山クラブ4 比企・奥武蔵陸水生物調査会5 野生動物救護獣医師協会6 比企野生生物研究所)

埼玉県小川町の官ノ倉山東部は、約30年前にゴルフ場開発が頓挫、工事半ばで放置された結果、現在では、自然が回復しつつある。最近、ここにメガソーラー建設計画が持ち上がり、物議を醸している。2020年春からの現地調査により、サシバの2シーズン連続での繁殖を確認した他、希少なミゾゴイやホトケドジョウの生息を確認した(バードリサーチ鳥類学大会2021他)。今回はミゾゴイに関する詳細について報告する。2021年春、地域内の沢を探査し、古巣4巣を発見。古巣付近の3か所に設置した録音機で音声を記録、解析し、3か所全てで本種特有の鳴き声を確認した。1か所では営巣中のミゾゴイの撮影に成功した。

ポスター発表 P-25*

秋田県におけるイヌワシの生息実態調査

〇足利直哉

秋田県では全県的にイヌワシの生息状況が不明な地域が多く、継続した生息状況の調査が必要である。当グループは2019年から奥羽山脈を主として調査を継続し、3ペアの生息を確認した。その他県内各地における合同調査でもイヌワシの生息を確認したほか、学生等新規調査員の育成・発掘にも取り組んでいる。会員には県外在住者もおり、調査に係る交通費等を自腹で賄っている。前述の現状を踏まえ本プロジェクトの活用により、調査参加者及び調査頻度を確保することで、調査不足地域におけるイヌワシの生息状況の把握を目指す。

ポスター発表 P-26*

沖縄県宮古島におけるインドハッカの初繁殖記録

〇1,2浜地歩・1,3植村慎吾・1能重光希・1平良航大・1仲地邦博(1宮古野鳥の会・2プレック研究所・3バードリサーチ)

インドハッカはインド、タイ、マレーシアなどで自然分布が確認されているムクドリ科鳥類である。日本国内では沖縄県石垣島、与那国島等で繁殖が確認されており、外来分布とされている。IUCNでも世界の侵略的外来種ワースト100に指定されている。今回、2022年に宮古島で本種の繁殖を初確認し、成鳥1羽と雛3羽に環境省リングを標識した。今後、さらに南西諸島で分布拡大を行う可能性があり、注意を要する。また、個体の由来を明確にするための遺伝解析等の研究が望まれる。

ポスター発表 P-27

鋼製橋桁の内部に見つかったアマツバメのコロニー

〇久野公啓(信州ワシタカ類渡り調査研究グループ)・佐伯元子(信州ワシタカ類渡り調査研究グループ)・堀田昌伸(長野県環境保全研究所)

アマツバメの営巣場所は、日本国内では海岸の岩場や山岳地帯の岩壁とされるが、海外では、建物の軒下やイワツバメ類の巣を利用した例が知られている。2022年の夏、長野県内の山間部で、橋を利用したアマツバメのコロニーを発見した。この橋は鋼製箱型の橋桁を用いているが、その内部に複数のアマツバメの巣が確認されたのだ。また、繁殖期の後には、多数のアマツバメがこの橋桁内部を夜間のねぐらとして利用していることもわかってきた。

ポスター発表 P-28

森林性鳥類の繁殖期における蠕虫感染率の生態学的要因の比較

〇石倉日菜子(東海大学院生物学研究科生物学専攻)・川路則友(森林総研フェロー)・松井晋(東海大学生物学部生物学科講師)

鳥類に感染する蠕虫(ゼンチュウ)類は主に節足動物などを中間宿主とする。同じ森林生態系においても採餌する場所や食性(果実食・昆虫食)によっても感染率が異なることが予想される。本研究では、2年にわたり北海道で繁殖期に捕獲した森林性鳥類から糞を採取して蠕虫感染の有無を調べた。成鳥(16種102個体)のうち12個体(12%)、幼鳥(15種67個体)のうち2個体(3%)から蠕虫卵が検出された。

ポスター発表 P-29*

鳥類の卵殻表面の覆う脂質の由来

〇佐川南美(東海大学大学院生物学研究科)・佐藤敦(東海大学生物学部生物学科)・松井晋(東海大学生物学部生物学科)

鳥類の卵表面は細菌感染を防ぐために、物理的・化学的な生体防御機構を備えている。本研究では化学的防御に着目し、スズメとシジュウカラにおいて、尾脂腺オイルの産卵後の卵表面への移行の有無、卵表面脂質中の尾脂腺オイルの比率を実験的に明らかにすることを目的とした。両種の産卵期・抱卵期の卵、親の尾脂腺オイル・抱卵斑脂質を採取し脂質量算出と成分分析を行った。その結果シジュウカラでは抱卵期の卵表面脂質量が産卵期よりも有意に高く、尾脂腺オイルの移行が示唆された。スズメでは卵表面脂質量や成分に有意な差はなかった。

現在、全国獣医大の中で、野生動物の救護を専用の施設で行っていたのは酪農学園大学だけであったが、野生動物医学センター閉鎖に伴い、この活動は2022年5月に終了した。1988年12月からであったので、約34年間の営みであった。獣医学教育全般、鳥類医学・医療の教育機会は少なく、この活動はそのような面でも期待されていたが、獣医学教育の質の保証と国際化に取り組んでいる過程で、バイオセキュリティーの面からの判断であった。今回の発表では演者らの拠点施設の活動概要を回顧しつつ日本の獣医学教育についての鳥類医学・医療の今後について論考したい。

ポスター発表 P-31

糞および胃内容物によるヒクイナの食性解析

〇大槻恒介(長崎大・院・水環)

ヒクイナは湿生植物が繁茂する植生内を潜行し活動するため、採食の様子を目視で直接観察するのは困難である。そのため本種の食性はよく分かっていない。そこで、ロードキルで死亡した個体の筋胃(n=1)と捕獲調査中に得られた糞(n=9)の内容物を実態顕微鏡で観察した。その結果、胃内容物には植物の種子と大量の甲虫の外骨格片が含まれていた。糞からは胃内容物でも確認した甲虫の外骨格片がわずかに含まれていた。このことからヒクイナが雑食性であることが確かめられた。

ポスター発表 P-32

2050年,2100年のウグイスの初鳴きは?

〇植田睦之(バードリサーチ)・太田佳似(日本気象予報士会 関西支部)

太田・植田(2020)はバードリサーチの生物季節調査「季節前線ウォッチ」のウグイスの初鳴きデータを用いて、初鳴き日を予測するモデルを作成した。今回、このモデルに「農研機構メッシュ農業気象データシステム」の将来の気温予測値を代入して、ウグイスの初鳴きの「未来予想図」を作成した。
その結果、IPCCの低位安定化シナリオ(2℃上昇シナリオ)でも、2050年には今よりも初鳴きが12日程度早くなり、最大排出量に相当するシナリオ(4℃上昇シナリオ)では、2050年には18日、2100年には27日も早くなることが予測された。

近年,動物の音声言語に関する研究が世界中で注目され、より多くの種類の音声研究が求められている。今回の研究で扱うメジロ(Zosterops japonicus)は、「チー」という声(以下チー音)と「キュルキュル」という連続した声(以下連続音)を主に発する。本研究ではこの2つの声の使い分けとその機能について検討する。また,メジロの異種の警戒声認識についても調べた。結果,メジロのチー音は互いの位置情報を共有する機能があり、連続音は集合を促す声であることがわかった。また、メジロは異種の警戒声を認識していることがわかった。

ポスター発表 P-34

研究支援のお願い-森の時空間的変化に対する鳥の反応-

〇柴山潤太(名古屋大学農学部)

私は小学生のころから趣味でバードウォッチングを続けてきた。現在、大学の卒論では、針葉樹人工林と針広混交林を対象に、森林の長期的な変化に伴う鳥相の違いと、鳥類の全般あるいは各種の森林環境選好性を研究している。調査地は愛知県北東部で、ラインセンサスと録音音声の解析を行っている。時間的変化を評価する際には、約30年前に研究室の先輩方が行ったセンサス結果を照合している。この度、大学院進学後の2023年度調査に援助をいただけることになった。本調査の充実・成功のため、皆様からのご寄付・ご投票を是非お願いしたい。

ポスター発表 P-35

アプリ「ライポス」によるライチョウ情報から生息状況の把握は可能?

〇堀田昌伸・黒江美紗子・尾関雅章(長野県環境保全研)・峰村政輝(長野県環境部自然保護課)

長野県では、高山生態系のシンボル、ライチョウの保護保全の一環として、2011年以降、登山者等からライチョウ情報を収集する事業を行なっています。昨年の発表では、2021年7月から運用を開始したアプリ「ライポス」で収集したライチョウ情報の精度(種同定,年齢や性の識別など)について発表しました。今回の発表では、私たちがライチョウの生息状況を調査している北アルプス爺ヶ岳・岩小屋沢岳で、「ライポス」の情報からライチョウの生息状況がどの程度把握されているかについて発表します。

ポスター発表 P-36*

ホオジロ類(ノジコ)の中継地(中池見湿地)飛来は夜間録音で検知できるか?

〇大坂英樹(トリルラボ)・古園由香・出口翔大(福井市自然史博物館)

中池見湿地はノジコの秋の渡りの重要な中継地である。当地でホオジロ類の夜間飛来を検出できないか2022年10月10日から15晩、毎晩12時間3カ所でタイマー録音し、あわせて毎日午前に標識調査した。地鳴きは実日数5日の明け方に見つかり、夜間は見つからなかった。判定は4分毎のスペクトログラム8千枚の中から声を探し、音を聞き判断した。検知方法の評価では、ホオジロ類が空間的に一様分布し、湿地への飛来総数が放鳥数の10倍超、検知半径が10mとすると、調査期間中に鳴く確率が10%あれば検出できることから、本調査では夜鳴かず明け方に鳴いたことが示唆された。

夜間には多くの鳥が渡るが、直接見ることが難しく、どんな種がいつ、どのように渡っているのかなど謎が多かった。近年、目視調査が可能な場所を青森県津軽半島の北端付近で発見し、2022年8月末から11月上旬に毎晩種別のカウント調査を行った。その結果84種約16000羽がカウントされ、渡る鳥の数は天候と月齢の影響を受けている可能性が浮上した。また、ハヤブサやフクロウ類が渡る鳥を捕食する場面や、ヤマシギとハト類がペアを組んで一緒に渡る不思議な現象も観察された。

 被写体を撮影すると同時に、レーザー距離計で被写体までの距離を測定し、被写体の画像寸法と被写体までの距離の2値から、被写体の実寸を測定する方法です。この測定法は「画像の大きさは撮影距離に反比例」との光学的原理を応用しています。 この方法を用いた事例として、日鳥学誌70(2) 2021に「技術報告 レーザー距離計を併用したサシバの飛翔時翼開長の測定」を紹介していますが、今回は、大形鳥類 (例えば、サギ類やツル類) を対象とした個体識別への実寸測定法による身体データの活用について紹介します。

ヒヨドリ可愛い!の一念で、ベランダでお鳥様専用休憩処を続けていたら、ヒヨドリが地元での繁殖を宣言。それから毎年、巣立ち雛を連れて来るようになり、冬は部屋の中まで縄張りを延長。そんな日々の中で垣間見たヒヨドリの行動や、その変化を書き止めたものを抜粋した、少し不思議な野鳥コミュニケーション実録です。

ポスター発表 P-40

混合コロニーにおけるカワウーアオサギ間の非対称な情報伝達

〇本多里奈(埼玉県立自然の博物館)、末武かや、東信行(弘前大学)

鳥類では他種の警戒声を利用する行動は一般的である。特に、混合コロニーの構成種は情報を共有しあっているように見えるが、先行研究では情報伝達の方向性やメカニズムを十分に検証していない。本研究ではカワウとアオサギの混合ないし単独コロニーでプレイバック実験を行い、種間でどのように警戒声が伝達されているかを調べた。その結果、カワウは一方的にアオサギの警戒声を利用していることがわかった。さらに、カワウはアオサギの行動を見ることで、その音声が「警戒すべき音声であるか否か」を判断している可能性が示唆された。

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