スライドショー発表 講演要旨

スライドショー発表 1 S-01

交差点上のコサギのねぐら

○多田英行(日本野鳥の会・岡山)

近年、岡山県南部では都市部の交差点上にコサギのねぐらが確認されている。本調査ではいくつかあるねぐらのうち、規模の大きな1か所を10年間調査した。ねぐらは非繁殖期にあたる8~3月頃に利用され、個体数のピークは11月頃に迎え、最大で151羽を記録した。寒波や強風の日には一時的に個体数が減少し、厳冬期にあたる1~2月には個体数が激減した。ねぐら利用されやすい場所の要因として、電線や電柱の付属物が多く止まりやすいこと、ねぐらの近くに明るい照明があること、周囲にビルなどの障害物が少ないことが考えられる。

スライドショー発表 1 S-02

オオトラツグミ生息状況30年の変遷 〜幻の鳥から普通種に〜

○石田健(自由科学者)

奄美大島のみに生息するオオトラツグミは、1990年代には、わずかに残されていた生息地の老齢林に夜を通して滞在しても、逢える機会の少ない鳥だった。現在は、分布域が広がり、多くの森林で、繁殖期には夜明け前にその美しいさえずりを聞かれ、夜が明けてからも姿を観察できるようになった。1980年代まで続いた森林開発が急速に低下し、21世紀に入ってから侵略的外来種フイリマングースの防除事業も成果をあげた結果だと考えられる。金作原国有林でのルートセンサスや、録音調査の結果などを示し、この30年の変遷を紹介する。

スライドショー発表 1 S-03

アライグマの捕食回避に適した森林性鳥類の巣箱の形状

○渡邉大雅(東海大・生)・松井晋(東海大・生)

鳥類の人工巣(巣箱)と自然巣を襲撃する捕食者相には違いがあり、外来種アライグマは鳥類の巣箱での繁殖を著しく攪乱することが近年問題になっている。アライグマが生息する羊ヶ丘実験林(札幌市豊平区)において、巣箱の入口の形状をS字型と筒型に改良した一般的に使用されているサイズの巣箱と、丸穴の入口から底までの距離が長くなるように改良した深底型の巣箱を設置してカラ類(ジシュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ)の繁殖生態を追跡し、各タイプの巣箱の繁殖成績からアライグマの捕食リスクの回避できる巣箱の形状を比較検証した。

スライドショー発表 1 S-04

カラスとスズメは磁石が嫌い?

○山口恭弘(農研機構)・吉田保志子(農研機構)・佐伯緑(農研機構)・水井陽介(静岡・農林技術研)

鳥は地磁気を感知でき、近年では鳥の網膜が磁気感知に関わることが示唆されている。一方、鳥害対策グッズとして磁石を使ったものが多く市販されている。しかし、鳥が地磁気を感知できることと、磁石による磁場の乱れを忌避することは別問題である。本研究では、飼育下でカラス、スズメを用いて、磁石の忌避効果の有無を検証した。餌場への来訪回数、試験飼料の消費量、来訪ごとの滞在時間のいずれについても、磁石ありと磁石なしの餌場で差はみられなかった。今回使用した1200ガウスの磁石に鳥を忌避させる効果はないと考えられた。

スライドショー発表 1 S-05

蓮田の防鳥網を考える~野鳥が羅網しにくい網の研究~

○内田 理恵(フリー・特定非営利活動法人バードリサーチ 協力会員)

茨城県霞ケ浦周辺のハス田では、カモ用防鳥網による野鳥の羅網被害が後を絶たず、毎年絶滅危惧種を含む数千羽の野鳥の羅網死が報告されています。本発表では、これまでほとんど研究されていない防鳥網の「網目」に着目し、野鳥が羅網しにくい網目として「正六角形目(ハニカム目)」を提案します。実際にハス田に網を設置しての実証試験はこれからですが、正六角形目網の試作状況について、ご報告いたします。(「2020年度 バードリサーチ調査研究支援プロジェクト」支援対象研究)

スライドショー発表 1 S-06

フライトコールによるヤイロチョウ渡り調査の試み

○植松永至・小倉豪・溝口文男・中村豊・中原聡・楠木憲一・岩本忠義・平田智法・黒田治男・ 牛込祐司・松宮裕秋(ヤイロチョウ渡り研)・峯光一(南西環境研)・鳥飼久裕(奄美野鳥の会)・中原亨(北九州市博)・山口典之・大槻恒介(長崎大院・水環)・上田浩一(五島自然ネット)・貞光隆志・西剛(対馬野鳥の会)・古田慎一(関門タカ渡り会)・中村滝男(生態系トラスト協)・森茂晃(ホシザキグリーン財団)・星野由美子(三瓶自然館)・今森達也・増川勝二(北陸鳥類研)

ヤイロチョウ(Pitta nympha )は、本州・四国・九州に少数が渡来する夏鳥であるが、姿の観察が困難なこともあり、生息動向は十分把握されていない。一方、本種の鳴き声は判別が比較的容易であり、渡り時期の夜間には、上空から渡り途中と思われる個体の鳴き声を聞くことがある。演者らは2018年より、移動中のヤイロチョウが夜間に発する鳴き声(フライトコール)を長時間録音で記録し、国内におけるヤイロチョウの渡り経路や渡来状況の調査を行っている。今回の発表では調査の内容や得られた結果の概要を紹介する。

スライドショー発表 1 S-07

ムクドリのねぐら環境選好性についての予備的な報告

〇植村慎吾(バードリサーチ)

ムクドリのねぐらは、人通りの多い場所に形成されると騒音や糞が問題になり、これまでに様々な自治体で追い払い対策が取られてきた。追い払いを行うと一時的にはねぐら問題が解決するものの、近隣で新たなねぐらを形成して同様の問題を引き起こす。ムクドリがねぐらとして好む環境がわかれば、ねぐらの追い払いや誘致に役立てることができる。本研究では、市民と協働で集めた多数のねぐら位置情報をもとにムクドリが好むねぐら環境を調べた。本発表ではこれまでに得られたねぐら位置の特徴や被害が起きやすい時期について予備的な結果を報告する。

スライドショー発表 2 S-08

森林性鳥類の繁殖期における蠕虫感染率の種間比較

○石倉日菜子(東海大・院・生)・松井晋(東海大講師)・川路則友

鳥類に感染する蠕虫(ゼンチュウ)類は主に節足動物などを中間宿主とし、これらの寄生者に感染した宿主鳥類は寿命や繁殖成功度が低下する場合があることが知られている。本研究では、北海道で繁殖期に捕獲した森林性鳥類から糞を採取して蠕虫感染の有無を調べた。成鳥(13種63個体)のうち4種7個体(11%)、幼鳥(10種25個体)のうち1種1個体(4%)から蠕虫卵が検出され、年齢に伴って寄生蠕虫類に感染するリスクが高くなると考えられた。

スライドショー発表 2 S-09

酪農学園大学野生動物医学センターWAMCに依頼された死因解析等報告集の刊行

○浅川満彦(酪農大・獣・医動物)・吉野智生(釧路動物園)

2004年4月、酪農学園大学野生動物医学センターWAMCが設立された。WAMCは外来種を含む野生動物のみならず、動物園水族館の飼育動物、アルパカやダチョウなどの特用家畜・家禽、愛玩鳥、エキゾチック動物等を対象に寄生虫病を含む感染症の病原体診断・疫学の研究活動を展開してきた。しかし、WAMCの活動が活発化するにつれ、動物病院構内に設置されたこともあり、次第に、野外で見つかる野生動物の死体も搬入された。その報告も30を超えたたことから、その報告集刊行された。この概要を紹介する。

スライドショー発表 2 S-10

香川県に飛来したヘラサギで判った事

○吉村正則

ヘラサギ成鳥の嘴の模様は経験的に個体差がある事を知っている。今回、2007年から香川に飛来したヘラサギを継続的に見る事で嘴や皮膚の露出部の模様で個体が特定出来、加齢と共に変化する嘴の様子、冠羽の伸長状況を写真撮影して年毎、あるいは同年での変化を約2週間毎に並べて伸長状況を示した。また、個体は違っているが、幼鳥の虹彩色の変化を月毎に並べて変化を追った。結果、しっかりとした冠羽が伸びるのは満6歳頃から、また、若い時期は換羽が伸び始める時期が遅いが、成鳥と共に冠羽が伸び始める時期が早くなっている。

スライドショー発表 2 S-11

鳥類は電柱・電線のどこに止まるか:Google Street Viewを用いた調査の検討

○藤岡健人(北教大・院・函館校)・三上修(北教大)

近年、Google Street Viewの画像データを用いた研究が多く行われている。たとえば、画像データから、街路樹の種や幹の直径を推定した研究がある。本研究ではこの画像データを鳥類研究に用いることを検討した。日本中に張り巡らされている電柱・電線を、多くの鳥類は止まり場所として利用している。これまでに、都市部における観察において、どの種が、電柱・電線のどの部位を利用しているのかがまとめられてきた。本研究では、これをGoogle Street Viewを用いて行い、どの程度のデータが集まるのか、既存研究と同様の結果が得られるのかを検討した。

スライドショー発表 2 S-12

ブッポウソウの繁殖成功を決める要因は?

○黒田聖子・出口智広(兵庫県立大・地域資源)

繁殖成績は対象種の生活史や個体群動態を理解する上で重要である。本研究は、二次樹洞営巣種である本種の巣箱での繁殖生態を調査し、産卵数、孵化雛数、巣立ち雛数を決める要因を明らかにすることを目的としている。一般化線形混合モデルを用いて解析を行った結果、産卵数は初卵日、孵化雛数と巣立ち雛数は巣材の種類が最も予測のよいモデルと説明変数として選ばれた。とくに巣材のない巣では、ある場合と比べて孵化率、巣立ち率がともに低かった。本種は巣材を運ぶ習性はなく、先に巣箱を利用する他種が運んだ巣材が、本種の繁殖成績を決める重要な要因であることがわかった。

スライドショー発表 2 S-13

香川県中讃地方に飛来したコウノトリの年齢、性別、出生地等の検討

○吉村正則

香川県には2012年から足環付のコウノトリが飛来し始めた。特に2019年から飛来数が著しく増加している。年齢、性別、出生地、血縁関係等がどうなっているのか知りたく、足環から個体を正確に割り出した。
結果、若い個体の割合が高く、地域的には兵庫県由来が多くて、次いで徳島県由来が多いという結果になった。血縁関係でも数組のペア、親子、兄弟が含まれているのが解った。今回は、今までの記録を纏めただけの報告であるが、今後サギ類など餌が競合する他種との関りや、溜池の環境が変わることによっての飛来数の変化等を継続して調べてみたい。

スライドショー発表 2 S-14

九州中北部におけるミヤマガラスの越冬生態

〇服部南・松田浩輝・中村頌湧・徳田誠(佐賀大)・側垣共生(鹿大・連合農)

ミヤマガラスによる都市部での集団ねぐらの形成が複数の地域で報告されており、衛生被害の軽減が求められているが、対策に必要な越冬生態に関する知見は少ない。本研究では佐賀市と熊本市をねぐらとする集団を対象に、ねぐらの場所の季節推移や採餌行動、餌内容等を調査した。両集団とも在来のカラスと混合ねぐらを形成し、採餌集団のサイズや餌内容はほぼ同様であったが、ねぐらから採餌場所までの距離は熊本集団が有意に長かった。これは市街地の規模の違いが影響していると考えられる。以上を踏まえ、本種の越冬生態について考察する。

スライドショー発表 2 S-15

鳥類における叉骨–胸骨間の形態比較

○有川慶彦(県立千葉高)

叉骨は、鳥類の胸部骨格を構成する骨の一つで、鎖骨が中央で癒合し、一本の骨となったものとされている。翼の上下運動に合わせ、バネのように変形する鳥類の運動において重要な役割を持つ骨である。筆者は、鳥類の骨格を観察した際、叉骨と胸骨が癒合している種、関節している種、独立している種等、叉骨-胸骨間の形態差異に気が付いた。そこで、鳥類の叉骨-胸骨間の形態の種間比較を行った。研究において、2通りの調査:骨格標本またはCT画像の観察による叉骨-胸骨間の形態の傾向の考察・解剖観察を行った。

自由集会

自由集会 1a 12月19日 15:50-16:50

研究を楽しむ場所づくり

植村慎吾(バードリサーチ)、森田泰暢(ヒマラボ)

鳥類学の発展には、プロの研究者の他に、市民研究者が大きく貢献してきました。バードリサーチでも季節前線ウォッチやムクドリのねぐら調査など、市民と一緒に野鳥のデータを集める研究的なプロジェクトを行っています。しかし、研究はデータ集め以外にも、仮説を考えたり結果をまとめたりするところにも面白さがあります。福岡大学発の、市民による主体的な知的生産を支援するヒマラボの活動を通して、もっと気軽な鳥研究の場所づくりについておしゃべりします。

自由集会 2ab 12月20日 14:00-16:10

羽毛の機能と進化

羽毛の形状や色彩から飛翔能力や性選択を研究

企画者:山﨑優佑(バードリサーチ) 田谷昌仁(東北大学) 前田将輝(Royal Veterinary College) 森本元(山階鳥類研究所)

現生生物で羽毛を持っているのは鳥類だけで、鳥類最大の特徴といえる。羽毛の形状や色彩は驚くほど多様であるが、これは羽毛が飛翔や性選択といった鳥の生存や繁殖に極めて重要な場面を司る器官であり、多様な生活史をもつ鳥類の適応の結果であると考えられる。では、種によって飛翔能力は異なるが、種間で羽毛の形状にどんな違いがあるのだろうか?また、羽色はどのような仕組みで構成されているのだろうか?
この自由集会では、これらのことを分析した研究などを紹介し、最後に演者の発表内容に対する質疑応答などをしたいと考えている。

自由集会 2b 12月20日 15:10-16:10

シマアオジの保全

長谷部真 シンバ・チャン

シマアオジの国内絶滅を回避するために、国内外の保全活動について検討する。まず、2020年のサロベツにおけるシマアオジの繁殖状況・地域における普及啓発活動を報告し、国際的な保全活動についても報告する。

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自由集会と同じ時間帯に予定しているテーマトークセッションには、講演要旨はありません。テーマリストはプログラムで確認ください。

出店・出展ブース

NPO法人 大阪自然史センター [はくラボ]

自然とのつながりを広げ深める窓口として、グッズの企画制作、出版、通信販売などに取り組んでいます。大阪市立自然史博物館ミュージアムショップを受託運営しています。

つぐみ
(羊毛フェルト作家)

羊毛フェルトでほぼ実物大のリアルな野鳥などを制作し紹介。そのほか展示・販売のお知らせや制作の様子などもご覧いただけます。本大会開催当日にあわせて新作も発表します。

どんすけ

どんすけという名前で、生き物のイラスト作製とグッズの販売を行っています。


公益財団法人 日本野鳥の会

当会では、野鳥観察に役立つグッズを中心に商品を販売しています。光学機器、図鑑、アウトドアグッズの他、野鳥をモチーフにした雑貨や、自然に配慮した商品など幅広くご紹介しています。

レーザー計測システム【極東貿易(株)】

レーザー計測システム”LMS1.0”は、制御PCにレーザー距離計、地図、GPSが連動し、照準した目標物の3次元座標を記録します。


株式会社ティンバーテック

Lotek社の鳥類用小型GPSタグを販売しております。メーカー担当者と連携し、ユーザー様のご要望に沿った製品をご提案いたします。


ティアック(株)
/ タスカム

野鳥の録音をハイレゾで収録できるICレコーダーのご紹介・販売を行います。野鳥の録音に便利なタイマー録音による実例紹介や、音源をご用意しております。

包み屋 くるみや

ハンドメイドのアクセサリーと布マスクを制作販売。日本の野鳥を中心に並べます。箕輪義隆さんとのコラボ柄あり。話題のシジュウカラ語柄あり。お探しの鳥がきっと見つかる!

とり雑貨 ことりこ

消しゴムはんこと羊毛フェルト作品を中心に、野鳥モチーフの雑貨を制作、販売しています。

パイフォトニクス株式会社

浜松市との実証実験で開発したLED照明装置(ホロライト)にムクドリが反応することがわかりました。安心安全な光による市街地から郊外への誘導でムクドリとの共存を目指します。

Lotek Wireless Inc.

Lotek は、繁殖および渡りの際の鳥の動きを追跡するためのタグを作成しています。最新のテクノロジーについて動画でご紹介します。ご覧ください。

株式会社一心助け

柏の葉キャンパス駅前に飛来してくるムクドリ群との共生をはかるため、ムクドリに実被害のない天敵「オオタカ」の立体視シートを樹木に吊り下げ、他の住処へ移動するようにしました。

ご寄付のお願い

バードリサーチでは、全国の会員の方のご参加・ご協力を得ながら、鳥の調査や研究に関わる様々な活動を行っています。
いいことやってるね!と思っていただけるよう、これからも、がんばっていきます。